
日本ではありえない
規模感に挑む。
今、東南アジアの国々が、軒並み大きな経済成長を遂げている。人口が増え、市場が活発になっていく一方で問題となっているのが、エネルギーの供給が不足していることだ。ベトナム社会主義共和国もそんな課題を抱える国のひとつ。そして、2014年、この国に新たな「石炭火力発電所」を建設するプロジェクトが立ち上がった。
この工事が東亜建設工業に託されたのは、それまでベトナムで4件もの発電所建設に携わってきた実績があったからだ。ベトナムの首都ハノイより、東南へ100km。タイビン省チャーリー川左岸の約50ha。「ベトナムに赴任して以来、様々な現場に携わりましたが、このタイビンが一番長かったですね」と、本プロジェクトに所長として携わった浅井は話す。工期は丸4年。今後、日本では絶対に建設されることがないほどの大きさ。その規模感が、グローバルな海外ならではのやりがいなのだと、浅井は言う。しかしながら、当然、すべてが順風満帆とはいかない。それぞれのフェーズで、様々な課題に直面することになる。
すべての工程を頭に入れ、
最善を導き出す。
「この工事で一番特徴的だったのは、川に建設する桟橋でした。発電所が完成した後は、1日当たり数千トンもの石炭が運ばれてくる場所ですからね」と浅井が話すように、海洋土木を得意とする東亜建設工業の強みは存分に発揮され、工事は順調に進んでいった。しかしながら、課題となったのは基礎工事。ベトナムでの豊富な実績はあったものの、問題はその広大な面積。東京の日比谷公園の3倍以上もある敷地全体に基礎を構築しなければ、ボイラー、タービン建屋といった主要構造物の建設、付帯設備の据え付けをすることができないのだ。「やはり工程管理が、一番難しいポイントだったと思います。まずは、コンクリートで基礎となる土台をつくらなければならないのですが、あまりに広い敷地だったため、すべてを同時に進行することはできませんでした。土建工事の後に来るプラント機械設備の工程を考え、どこが重要なのかをしっかりと見極めなければ、各種機械を据え付けてくれるプラント据付会社の作業が滞り、予定通りの工期に終了しない恐れが出てきますから」と語る浅井は、現地で調整役として、タフな交渉を行っていった。
困難を超える
やりがいがあるからこそ。
自身はあまり社交的ではなかったという浅井だが、海外の仕事では現地の業者との交渉は日常茶飯事。そんな環境が、積極的な性格に変えてくれたと言う。「各業者の方は当然日本人ではありませんし、交渉は苦労することが多いです。しかし、現場を仕切っている身ですから、怯むわけにはいきません。全員の安全を確保するためにも、工程通りに工事を進めることは、現場所長の一番大切な役割だと考えています」。そう浅井が言うように、工事現場に何かを納入する時は、常にベストなタイミングがある。それがずれてしまうと、現場の危険度は一気に増してしまうのだ。また、海外の協力会社は、日本のように技術力が高いわけではない。「管理」と一口に言っても、様々な視点を持たなければ、プロジェクトを無事に完工させるのは難しいだろう。「海外の現場は、本当に様々な問題が起きます。正直、きついなと思う場面も多いです。しかしながら、それを乗りきって工事が終わった時の達成感は、また次も海外でやりたいと思えるほど、心地良いですね」。浅井がそう話す通り、本プロジェクトが業界に与えた影響は大きく、数々のメディアにも取り上げられた。「『お父さんこんな仕事やってるんだ!』そう子どもに言ってもらえることも、この仕事の醍醐味ですかね。赴任中も家族に会うための休暇はきちんと取得することができますし、また、頑張った分だけ評価もしてもらえます。そう考えると、行ける時に海外での仕事を経験しておくのも悪くないと思いますよ。是非多くの若者にも海外へ挑戦してほしいですね」。そう語る浅井の目は、また次の現場を見据えていた。
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